なぜ日本人は英語を話すのが苦手なのか
ある調査番組が指摘したように、1980年代から90年代にかけての日本の英語教育は「文法と単語」が中心だった。正しい答えを出すことが重視され、間違いは減点対象。この体験を経た世代は、英語を「教科」として捉え、コミュニケーション手段として使う発想を持ちにくい。
さらに見逃せないのが「空気を読む」文化の影響だ。周囲に合わせることが美徳とされる環境では、発音の良さをひけらかすような振る舞いは控えめにするのが無難だった。実際、90年代のバラエティ番組では、流暢な英語を話す芸人に対して笑いが起きる場面が珍しくなかった。こうした積み重ねが「人前で英語を話すことへの抵抗感」を形作ってきたといえる。
ところが状況は変わった。訪日外国人観光客は年間約3,700万人に達し、上場企業の約75%が業務で英語を使用する時代である。社内公用語を英語にする企業も増え、英語を話せないことがキャリアの制約になるケースはもはや珍しくない。2020年以降の学習指導要領改訂で、小学校での英語教育や大学入試における「話す」技能の重視が進んだ背景には、こうした現実がある。
ただ、大人になってから「話す力」を鍛え直すのは簡単ではない。英会話教室に通う時間が取れない、対面レッスンは心理的ハードルが高い、そもそも料金が気になる——そんな声をよく耳にする。そこで選択肢として浮上してきたのがオンライン英会話だ。
主要オンライン英会話サービスの比較
一口にオンライン英会話といっても、講師の国籍やレッスン形式、料金体系は千差万別である。以下の表に、日本で利用者の多いサービスをまとめた。
| サービス名 | 月額料金の目安(毎日プラン相当) | 講師の特徴 | こんな人に向いている | 注意点 |
|---|
| DMM英会話 | 5,000〜7,000円前後 | 世界120カ国以上の多国籍講師、日本人講師も在籍 | バランス重視で「まず1社」試したい初心者〜中級者 | 人気講師の予約が取りにくい時間帯あり |
| ネイティブキャンプ | 7,000円前後(回数無制限) | 予約不要の「今すぐレッスン」が特徴、ネイティブ講師も選択可 | スキマ時間に「とにかく話す量」を増やしたい人 | 講師の質にばらつきがあるとの口コミも |
| Bizmates | 13,000〜15,000円前後 | 講師全員がビジネス経験者、業界別教材が充実 | 昇進・転職など仕事に直結する英語力を伸ばしたい社会人 | 他社と比べて料金は高め |
| レアジョブ英会話 | 月8回〜毎日プランまで選択可 | フィリピン人講師中心、採用率の低さが品質の目安 | 英会話が初めてで学習方法から相談したい人 | ネイティブ発音を求める人には不向き |
| kimini英会話 | 5,000円前後〜(平日昼限定プラン等) | 学研グループ運営、学校教材に近いカリキュラム | 文法も復習しながら基礎からやり直したい人 | 教材の自由度はやや低め |
| Cambly | 10,000円台〜(ネイティブプラン) | ネイティブ講師のみ、オールイングリッシュ環境 | 発音や自然な表現にこだわる中上級者 | 日本語でのサポートは期待できない |
料金は為替レートやキャンペーンにより変動するため、各社の公式サイトで最新情報を確認してほしい。
自分に合ったサービスをどう選ぶか
オンライン英会話で挫折する人の多くは、自分の目的や生活リズムに合わないサービスを選んでしまったケースだ。大阪で働く営業職の佐藤さん(28歳)は、「とにかく安さだけで選んだら、予約が取れずに2カ月でやめた」と振り返る。その後、朝型の生活に切り替え、Bizmatesのビジネス特化プランに変更してからは、週3回のペースを半年続けられているという。
選択のポイントは大きく三つある。
一つ目は「レッスンの時間帯と予約のしやすさ」。深夜や早朝しか時間が取れない人にとって、24時間対応かどうかは死活問題だ。予約制か、それともネイティブキャンプのように思い立った瞬間に受講できる「今すぐレッスン」型かも、生活スタイルによって評価が分かれる。
二つ目は「講師の国籍と指導スタイル」。フィリピン人講師は明るくフレンドリーな傾向があり、英語を話すことへの心理的ハードルを下げてくれる。一方、セルビアやボスニアなど欧州の講師は、ヨーロッパならではの表現や文化背景も教えてくれる。ネイティブ講師にこだわるならCambly一択に近いが、料金はその分上がる。
三つ目は「教材の質と自分の目標の一致」。TOEIC対策をしたいのか、日常会話を伸ばしたいのか、ビジネスプレゼンを磨きたいのか——この答えによって最適なサービスは変わる。DMM英会話は教材数が多く幅広い目的に対応できるが、ビジネス特化ならBizmates、ニュース記事を使った学習をしたいなら産経オンライン英会話Plusといった具合だ。
もう一つ、見落としがちなのが通信環境の安定性である。QQ Englishのように講師がオフィスからレッスンを行うサービスは、自宅からの配信に比べて通信トラブルが少ない傾向にある。地方在住でネット回線が不安定な場合、こうした細かい差が継続のカギを握る。
習慣化のための実践的な工夫
サービス選びと同じくらい大切なのが、どうやって学習を習慣にするかだ。都内在住の主婦、鈴木さん(42歳)は、「子供が学校に行っている午前中の30分を英会話にあてる」と決めてから、3年でTOEICスコアが200点以上伸びた。彼女が使っているのはレアジョブの月8回プラン。無理のない回数設定が、かえって長続きの秘訣になったという。
学習のコツをいくつか挙げる。
短時間でも「毎日触れる」ことの効果は大きい。25分のレッスンを週2回よりも、10分の独習を毎日続けるほうが口の筋肉は英語に慣れる。レッスン前に予習用教材にざっと目を通し、終わった後に気になった表現をメモする——この小さな積み重ねが数カ月後に差となって現れる。
「間違いを恐れない」ことも、あえて強調したい。日本の英語教育で染みついた完璧主義は、スピーキングにおいてはむしろ障害になる。フィリピン人講師の多くは学習者のミスに寛容で、コミュニケーションが成立したことをまず評価してくれる。この「通じた」という成功体験の積み重ねが、話す勇気を育てていく。
録音機能を活用している利用者も少なくない。自分の発話を客観的に聞くと、改善点が見えやすい。あるユーザーは「最初は自分の声を聞くのが苦痛だったが、3カ月続けたら明らかに発音が変わった」と話す。最近のプラットフォームではレッスンの自動録画に対応しているところも多いので、復習に使わない手はない。
地域による事情とこれからの英語学習
日本国内でも、都市部と地方ではオンライン英会話の使われ方に微妙な違いがある。東京や大阪では、ビジネス目的の受講者が多く、早朝や深夜のレッスン枠が埋まりやすい。一方、地方都市では、対面の英会話教室が限られているぶん、オンラインへの依存度が高い。Wi-Fi環境が整っていれば、北海道の田舎町でもマニラの講師と会話できる——これがオンライン英会話の本質的な強みだ。
訪日観光客の増加に伴い、地元で外国人と接する機会も格段に増えている。京都で旅館を営む一家が、外国人客をもてなすために家族全員でオンライン英会話を始めたという例もある。学びの動機は人それぞれだが、「話せたらいいな」から「話さなければ」へと空気が変わりつつあるのは間違いない。
さて、実際に始めるなら、ほとんどのサービスが提供している無料体験レッスンを活用しない手はない。DMM英会話やレアジョブ、ネイティブキャンプはいずれも初回の体験受講が可能で、講師との相性やプラットフォームの使い勝手を事前に確かめられる。2〜3社を試してから決めるのが、失敗を避ける賢いやり方だ。
英語を「完璧に話す」必要はない。伝えたい気持ちがあれば、単語を並べるだけでも通じる場面は多い。オンライン英会話は、その一歩を踏み出すための、思いのほか手軽な道具なのである。