我慢の文化と市販薬頼みのリスク
日本では電車内の広告やドラッグストアに数多くの鎮痛薬が並び、ロキソニンS、イブ、バファリンといった名前を一度は目にしたことがあるだろう。手軽に買えるのはありがたい反面、注意したいのが薬物乱用頭痛(MOH)だ。専門医の間では、複合鎮痛薬を月に10日以上使うとMOHのリスクが高まるとされる。単剤でも月15日以上の使用は危険ラインで、「効かないから」と市販薬の回数を増やすほど、かえって頭痛を慢性化させる悪循環に陥る。
頭痛を我慢することは、日本の文化として美徳とされてきた側面がある。しかし近年、頭痛は適切に治療できる病気だという認識が広がりつつある。まずは自分の頭痛のタイプを知ることが、すべての出発点になる。
タイプを知り、市販薬を正しく選ぶ
頭痛外来のクリニックでは、まず問診で頭痛のタイプを分類する。主なものは緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛の三つだ。緊張型頭痛は肩や首のこりが原因で頭全体が締め付けられるように痛み、日本人に最も多い。片頭痛は片側がズキズキと脈打つように痛み、吐き気や光・音への過敏を伴う。群発頭痛は目の奥がえぐられるような激痛が繰り返し、痛みは非常に強い。
それぞれ対処法が違うため、「なんとなく痛いから市販薬」では解決しないこともある。特に片頭痛は、市販の複合鎮痛薬より処方薬の方が効果的な場合が多い。
ドラッグストアで選べる市販の頭痛薬を比較するとき、まず確認したいのは成分だ。主に四つの系統に分けられる。NSAIDs系はロキソプロフェンやイブプロフェン配合で、効き始めが早く炎症を抑える。アセトアミノフェン系は胃への負担が少なく、比較的安全に使いやすい。複合鎮痛薬はカフェインや鎮静成分が加わり効き目は強いが、MOHのリスクが高めだ。漢方系は呉茱萸湯や五苓散など体質に合わせて選び、即効性より体質改善を目指す。
| タイプ | 代表的な市販薬 | 費用の目安 | 向いている人 | メリット | 注意点 |
| 単剤NSAIDs | ロキソニンSなど | 数百円台から | 痛みが強くしっかり効かせたい人 | 効果が高く作用が速い | 胃への負担に注意 |
| アセトアミノフェン系 | タイレノールAなど | 数百円台から | 胃が弱い人、空腹時にも使いたい人 | 副作用が比較的少ない | 炎症には効きにくい |
| 複合鎮痛薬 | ノーシン、セデスなど | 数百円〜千円台 | 複数の症状をまとめて抑えたい人 | 総合的な効き目が強い | 月10日以上の使用は避ける |
| 漢方系 | 呉茱萸湯、五苓散など | 千円前後 | 体質改善も視野に入れたい人 | 依存の心配が少ない | 即効性は期待しにくい |
※価格は購入場所や時期によって変動するため、あくまで目安となる。
実際に市販薬を選ぶときは、成分だけでなく「月に何日飲んでいるか」を意識してほしい。頭痛ダイアリーをつけると、受診時の診断にも役立つし、自分の使用量の見直しにもつながる。市販薬を月に数回以上使う人は、一度専門医に相談するのが賢明だ。
頭痛外来と最新治療の選択肢
市販薬で改善しない場合や、頭痛の頻度が増えた場合は、頭痛外来の受診を検討したい。都市部では頭痛外来の数も増えており、たとえば頭痛外来を探すなら新宿周辺は選択肢が多く、複数のクリニックが専門外来を設けている。脳神経外科やペインクリニックに併設されるケースが多く、診療時間やアクセス、専門医の有無はクリニックごとに異なるため、事前にホームページで確認するのがおすすめだ。保険診療が適用されるケースが多く、費用の負担は比較的抑えられる。
頭痛専門医の探し方は、日本頭痛学会のホームページから確認できる。近年は治療の選択肢も広がっており、片頭痛の急性期にはトリプタン系の処方薬が使われるほか、慢性の片頭痛には予防薬としてCGRP関連の薬が登場した。新規経口CGRP阻害薬の開発も進み、日本人患者を対象とした臨床試験の報告も増えている。こうした最新治療は、頭痛外来の専門医であれば適切に提案してくれる。地方在住で近くに専門外来がない人は、オンライン診療に対応しているクリニックを探すのも一つの方法だ。
まずは記録から始めよう
頭痛対策の第一歩は、自分の頭痛を「なんとなく」から「データ」に変えることだ。スマートフォンのメモで十分なので、痛む場所、時間帯、持続時間、その日の天気や睡眠時間を記録してみてほしい。2週間から1カ月続けると、自分の頭痛の傾向がはっきり見えてくる。
記録を続けるうちに「生理前に多い」「寝不足の日に起こる」といったパターンに気づくはずだ。そのデータを持って頭痛外来を訪れれば、診断もスムーズになる。頭痛は我慢するものではなく、正しく対処すれば付き合い方を変えられる。あなたの毎日が少しでも軽くなることを願っている。