日本人がオンライン英会話でつまずく理由
業界の調査報告によると、日本人で英語を話せる人の割合は多く見積もっても10%程度とされている。EF英語能力指数でも、日本の順位は調査対象国のなかで下位グループに属しており、能力レベルは「低い」に分類されている。原因のひとつは、日常生活で英語を話す機会が圧倒的に少ないことだ。中学高校と6年間学んでも、アウトプットの場がないまま社会人になるケースが大半である。
こうした背景のなか、近年急速に利用者が増えているのがオンライン英会話だ。IID社が実施した調査では、英語学習者のうち51%以上がオンラインプラットフォームを利用しており、その理由として「通学型の教室より費用が抑えられる」ことが上位に挙がっている。しかし、選択肢が増えたぶん、どのサービスを選べばいいのか迷う声も多い。
実際に多くの学習者が直面する課題は、主に三つある。一つ目は講師の質のばらつきだ。フィリピン人講師を中心とするサービスでは、明るく話しやすい講師が多い一方、発音の癖が気になるという声もある。二つ目はレッスン時間の確保。残業の多い会社員や子育て中の人にとって、決まった時間に予約を入れること自体がハードルになる。三つ目は教材選びの難しさ。TOEIC対策なのか、ビジネス英語なのか、日常会話なのか、目的を絞りきれずにいくつもの教材を中途半端にしてしまうパターンだ。
東京都在住の会社員、田中健太さん(34)は「最初は勢いで申し込んだものの、講師との相性が合わずに3回でやめてしまった」と話す。一方、大阪の大学生、佐藤美咲さん(21)は「レッスンのたびに違う講師を選べるサービスに変えたら、飽きずに半年続けられている」という。この違いは、自分の生活リズムと学習スタイルに合ったサービスを選べたかどうかにある。
主要サービスの特徴を知る
オンライン英会話サービスは数十社にのぼり、それぞれ得意分野が異なる。価格帯や講師の国籍、レッスンの受け放題の有無など、比較すべきポイントは多い。以下の表に、日本でよく利用されているサービスを整理した。
| サービス名 | 月額料金(税込) | 講師の特徴 | レッスン形式 | 強み | 注意点 |
|---|
| ネイティブキャンプ | 1,980円~ | 多国籍、日本人講師も在籍 | 24時間365日、回数無制限 | 思い立ったときにすぐ受講可能 | 人気講師は予約が取りにくい |
| レアジョブ英会話 | 4,620円~ | フィリピン人講師中心 | 1回25分、予約制 | カウンセリング体制が充実 | ネイティブ講師のレッスンは別料金 |
| DMM英会話 | 6,980円~ | 世界約134カ国、1万名以上 | 24時間365日、予約制 | 教材が1万以上ありすべて無料 | 月額料金はやや高め |
| Bizmates | 13,200円~ | ビジネス経験のある講師 | 1回25分、予約制 | ビジネス英語に特化 | 日常会話目的には不向き |
| hanaso | 4,180円~ | フィリピン人有名大学卒業生 | 1回25分、予約制 | 独自メソッドで段階的に学習 | 講師数は大手に比べて少なめ |
この表を見ると、価格とサービスの内容にはかなり幅があることがわかる。月2,000円未満で始められるサービスもあれば、ビジネス特化型で1万円を超えるものもある。大切なのは、自分の目的に合致したものを選ぶことだ。たとえばTOEICのスコアを短期で伸ばしたいなら、試験対策教材が豊富なDMM英会話やレアジョブが候補になる。会議で通用するビジネス英語を身につけたいなら、Bizmatesのような特化型サービスが適している。
名古屋で英会話講師として働く中村恵子さんは「学習者が失敗する最大の理由は、自分のレベルより難しすぎる教材を選んでしまうこと」と指摘する。初心者であれば、日本語でのサポートがあるサービスや、講師が日本語を話せるかどうかも確認しておきたいポイントだ。
日常生活にレッスンを組み込む工夫
サービスを選んだあとの課題は、いかに継続するかである。忙しい日常のなかで英会話の時間を確保するには、いくつかの工夫が有効だ。
朝型の人は、出勤前の20分をレッスンに充てるとリズムが作りやすい。実際に、早朝の時間帯は講師の空きが多いため、予約も取りやすい傾向がある。夜型の人なら、子どもが寝静まったあとの30分を活用している例も多い。神奈川県で二児を育てる主婦の山本あゆみさん(41)は「夕食後の片付けが終わった22時からが私の英会話タイム。毎日同じ時間に受けることで習慣化できた」と話す。
もうひとつ、見落とされがちなのが復習の時間だ。25分のレッスンを受けたあと、5分でもいいので新しい表現をメモに残す。これを続けるだけで、語彙の定着率が大きく変わる。スマートフォンのメモアプリやノートに、講師から指摘された発音の修正点を書き留めている学習者も多い。
また、特定の講師を「お気に入り」登録しておくと、毎回の自己紹介や説明にかかる時間を省ける。京都の大学生、鈴木拓也さん(20)は「3人のお気に入り講師をローテーションしている。お互いに近況を話せる関係になると、レッスンが待ち遠しくなる」と語る。この「待ち遠しい」感覚こそが、継続の原動力になる。
地域によっては、オンライン学習と並行して使えるリソースもある。たとえば東京や大阪では、図書館が英語多読用の書籍を充実させているところが増えている。英会話のレッスンで学んだ表現を、そうした書籍で実際の文脈のなかで確認するのも効果的な方法だ。
講師との向き合い方と学習の深め方
オンライン英会話でありがちなのが、講師に「委ねすぎる」姿勢だ。レッスン中は講師が会話をリードしてくれるため、自分が話している感覚になりやすい。しかし実際には、質問に一言で答えているだけ、というケースも少なくない。これを防ぐには、レッスン前に「今日はこのテーマについて話したい」と決めておくのが有効だ。
たとえば「週末に観た映画の感想」「最近気になったニュース」「仕事で困っていること」など、身近な話題で構わない。自分から話題を提供することで、受動的なレッスンから能動的な練習へと変わる。福岡の会社員、高橋誠さん(38)は「毎回レッスン前に3分だけ準備するようにしたら、講師からのフィードバックも具体的になった」と実感を語る。
発音に関しては、ネイティブ講師と非ネイティブ講師のどちらを選ぶかで意見が分かれるところだ。米国や英国の講師は自然な発音や表現を学べるが、料金が高めに設定されていることが多い。一方、フィリピン人講師は料金が抑えめで、第二言語として英語を習得した経験から、学習者のつまずきに共感してくれる強みがある。どちらが優れているかではなく、自分の段階に合った講師を選ぶのが賢いやり方だ。
業界関係者のあいだでは「まずは非ネイティブ講師で話す度胸をつけ、慣れてきたらネイティブ講師に切り替える」という流れが推奨されている。実際、この方法で学習を進めた人の多くが、半年から1年程度で日常会話に困らないレベルに達している。
最後に、レッスン以外の時間の使い方にも触れておきたい。通勤中にポッドキャストを聴いたり、昼休みに英語の記事を読んだりするだけでも、インプットの量は格段に増える。オンライン英会話はあくまでアウトプットの場であり、インプットとセットで初めて効果を発揮するものだ。1日たった25分のレッスンでも、それを軸に据えて周囲の時間を英語で固めていけば、数ヶ月後には確かな変化を感じられるだろう。
さて、あなたはどの時間帯に、どのサービスで始めるか。まずは気になるプラットフォームの情報を集め、自分の生活リズムに合うかどうかを照らし合わせてみてほしい。