なぜいま、電気エンジニアが求められているのか
日本の産業界で電気エンジニアの需要が高まっている背景には、いくつかの大きな流れがある。まず脱炭素化だ。太陽光や風力、バイオマスといった再生可能エネルギー設備の導入量はこの10年で急増しており、それに伴い設備の保守・運用を担う技術者の確保が追いついていない。資源エネルギー庁の資料によれば、再エネの全国設備容量は1億kWを超える見通しで、太陽光発電所の新設や点検を担う企業では、資格を持つ即戦力の電気エンジニアの取り合いが起きているという。
次に自動車業界の変化だ。EV(電気自動車)化の進展で、モーターやインバータ、制御回路の設計に携わる電気系エンジニアの仕事が増えている。トヨタや日産グループのプロジェクトに配属される派遣案件も多く、自動運転アシストシステムの開発など、従来の枠を超えた領域が広がっている。
さらに半導体産業の再興も追い風だ。政府が半導体を戦略産業に位置づけ、国内外企業の工場誘致を進めていることで、電気設備や受変電設備を扱える技術者の需要が地方でも高まっている。ただ、この分野は若手不足が深刻で、業界団体の試算では今後10年で数万人規模のエンジニア不足が見込まれる。技術を身につければ、長く安定して働ける土壌が整っているといえる。
求められるスキルと資格の選び方
電気エンジニアと一口にいっても、仕事の範囲は広い。設計、制御、保守点検、プロジェクト管理と、分野によって必要となるスキルは異なる。まず押さえておきたいのが、次のような基礎スキルだ。
- 電気回路の基礎知識と、回路図・シーケンス図の読解力
- PLCやシーケンサを用いた制御設計、ラダー図の作成スキル
- インバータやサーボ制御などモーター制御の理解
- CADツールを用いた電気図面作成の経験
- 現場での試運転・調整を進めるためのコミュニケーション力
未経験からでも挑戦できる道は開けている。大手メーカーへの配属が豊富な派遣会社では、入社後に1〜2カ月間の研修を設け、基礎から実務まで段階的に教えてくれるところも多い。配属先はトヨタや日産、ホンダ、デンソーといったグループ企業が中心で、プロジェクトローテーションによって多彩なキャリアを積める。
資格はキャリアの選択肢を広げるうえで有効だ。代表的なものが電気主任技術者と電気工事士の二つ。電気主任技術者は発電所や工場、ビルの電気設備の保安監督を担う国家資格で、扱える電圧によって第一種から第三種まで分かれている。まずは第三種から目指す人が多い。電気工事士はビルや一般住宅の電気工事に必要な資格で、こちらも種類によって施工できる範囲が異なる。
各資格の特徴を比較すると、次のようになる。
| 資格 | 仕事の内容 | 取得の難易度 | 向いている人 | 主な活躍の場 |
|---|
| 第三種電気主任技術者 | 600V未満の電気設備の保安監督 | 比較的取りやすいが実務経験が必要 | 設備管理や工場勤務を目指す人 | 工場、ビル、太陽光発電所 |
| 第一種・第二種電気主任技術者 | 高圧・特別高圧設備の保安監督 | 難度が高く、実務要件も厳しい | 再エネ発電所や大規模施設の責任者 | 発電所、変電所、大規模工場 |
| 第二種電気工事士 | 一般住宅や小規模店舗の電気工事 | 基礎から学べる | 手に職をつけたい未経験者 | 住宅、商店、内装業 |
| 第一種電気工事士 | ビル・工場など500kW未満の施設工事 | 二種の上位資格 | より大きな工事を手がけたい人 | ビル、工場、商業施設 |
特に再エネ業界では、資格を持っていても現場経験が乏しいと即戦力として扱われないケースがある。逆にいうと、実務経験を積みながら資格を取得すれば、競争力は格段に上がる。
働く場所で変わる仕事の中身
電気エンジニアの求人は、関東、関西、東海の三大都市圏に集中している。一方で、地方には発電所や工場の保守案件が多く、都市部に住む技術者との間に地理的なミスマッチが生じているのが現状だ。
たとえば福井や長崎では、発電所の予防保全設計や保守点検の求人が出ている。三菱電機グループの企業では、発電機や電動機の予防保全設計を担当する案件があり、国内出張が中心で海外赴任がないことから、家族と暮らしながら腰を据えて働きたい人に向いている。原子力発電所向けの設備を扱う案件では、たとえ廃炉となっても30年近くにわたって放射線量のモニタリングが必要とされるため、長期的な安定就業が見込める。
大阪では、データセンターや病院、鉄道に設置された無停電電源装置(UPS)や可変速装置の保守・復旧を担う仕事がある。電気設備の保全を手がけたい人には、都市部でもこうした案件が豊富に存在する。
キャリアを築くための具体的なステップ
電気エンジニアとして成長するには、資格取得と実務経験を交互に積むのが近道だ。まずは次のステップを参考にしてほしい。
- 自分の興味のある分野(設計、制御、保守、再生可能エネルギーなど)を決める
- 基礎となる第二種電気工事士や第三種電気主任技術者の取得を目指す
- 未経験歓迎の求人や派遣案件から実務経験を積み始める
- 働きながら上位資格や専門スキルを追加取得する
- プロジェクト管理や設計リーダーなど、より責任のある役割へステップアップする
転職を検討しているなら、大手転職エージェントの併用がおすすめだ。求人件数が国内最大級のサービスは地方の案件も扱っている。特に地方勤務を希望する場合は、複数のエージェントに登録して情報量を増やしておくと選択肢が広がる。
富士電機のように、社内に能力開発センターを設け、年間600近い教育プログラムを用意している企業もある。こうした会社では、OJTで先輩社員から引き継ぐ形で仕事を覚えられるうえ、成果に応じて昇級する評価制度を導入しているため、途中入社のハンデを感じずに成長できる。
長く働き続けるための心構え
電気エンジニアの仕事は、社会のインフラを支える責任の重い仕事だ。一方で、そのぶんやりがいも大きい。電力を使うすべての施設で技術者は必要とされ、仕事が途切れることはまずない。
働き方も変わってきている。年休124日以上を確保している求人や、待機給与を100%支給する会社、時短勤務や在宅勤務に対応する企業も増えている。長く続けるためには、自分のライフスタイルに合った働き方を選べるかどうかも重要なポイントだ。
電気エンジニアとしてのキャリアは、一朝一夕で完成するものではない。しかし、資格と経験を積み重ねれば、日本全国どこでも通用する技術が身につく。興味を持ったら、まずは一歩踏み出して、自分に合う職場を探してみてはいかがだろう。