日本人の頭痛、実はこんなに多い
日本頭痛学会の全国調査によると、15歳以上の片頭痛有病率は8.4%。患者数にするとおよそ840万人です。女性は12.9%と男性の3.6%を大きく上回り、特に30代の女性では5人に1人が片頭痛を持っているとされています。頭痛は決して特別な人の問題ではありません。
頭痛と一言で言っても、タイプは大きく分けて三つあります。最も多いのが緊張型頭痛で、肩や首のこりが原因で起こる締め付けられるような痛みです。次に多いのが片頭痛で、ズキズキと脈打つように痛み、吐き気や光・音への過敏を伴います。そして近年注目されているのが天気痛。気圧や気温の変化で頭痛やめまい、倦怠感が起こるもので、成人のおよそ6割が天気の変化で体調を崩した経験があるとされています。梅雨や台風の季節に症状が増えるのも、日本の気候ならではの特徴です。
ここで問題なのは、多くの人が「我慢すれば治る」と放置してしまうことです。市販の痛み止めを飲み続けても効かなくなり、かえって頭痛が慢性化する薬物乱用頭痛に陥るケースも少なくありません。頭痛は我慢するものではなく、正しく対処すれば改善できるものです。
タイプ別に見る、セルフケアと治療の選択肢
まずは自分がどのタイプの頭痛なのかを見極めましょう。片頭痛の特徴は、痛みが片側に偏ることが多く、動くと悪化してじっとしていたくなること。一方、緊張型頭痛は両側が締め付けられるように痛み、肩こりや目の疲れがきっかけになることが多いです。天気痛は低気圧が近づく前、梅雨や台風の季節に症状が出やすくなります。
片頭痛の誘因は人それぞれで、生理、寝不足、寝すぎ、空腹、ストレス、チーズや赤ワインなどの食べ物、強いにおいが挙げられます。ある30代の女性患者さんは、生理前と週末の寝だめの後に必ず発作が出ることに気づき、そこに合わせて予定を調整するだけで頭痛の回数が減ったと言います。自分の誘因を知ることが第一歩です。頭痛ダイアリーをつけて、どんな日に痛みが出たかを記録していくと、パターンが見えてきます。紙の手帳でも、スマートフォンのアプリでも構いません。
緊張型頭痛には、姿勢の見直しが効果的です。パソコン作業中は画面を目線の高さに合わせ、1時間に一度は立ち上がって肩を回しましょう。蒸しタオルで首や肩を温めるのも手軽でおすすめです。
天気痛の対策は「予測」が鍵になります。気圧予報アプリを活用して、気圧が下がる前に睡眠をしっかり取る、耳の周りをやさしくマッサージするなどの準備ができます。雨の前に症状が出やすい人は、前もって休息を確保しておくと負担が減ります。
セルフケアで改善しない場合、薬の力を借りるタイミングです。頭痛治療はこの数年で大きく変わりました。従来のトリプタン系薬に加え、血管を収縮させない新しいタイプの薬が次々と登場しています。
| 分類 | 代表的な選択肢 | 費用の目安 | こんな人に | メリット | 注意点 |
|---|
| 市販薬 | ロキソニンS、イブA、カロナールなど | 数百円から千円台 | 痛みが月に数回までで市販薬で改善する人 | ドラッグストアで手軽に買える | 飲みすぎは薬物乱用頭痛のリスク |
| トリプタン系処方薬 | スマトリプタンなど | 保険診療で自己負担1〜3割 | 市販薬が効かない中程度以上の片頭痛 | 発作時に速やかに効く実績 | 血管を収縮させるため心臓や血管への負担に注意 |
| ジタン系 | レイボー | 保険診療で自己負担1〜3割 | トリプタンが使いにくい人 | 血管収縮作用が少ない | 眠気やめまいが出ることがある |
| 経口CGRP受容体拮抗薬 | ナルティーク、アクイプタ | 保険診療で自己負担1〜3割 | 発作と予防の両方に対応したい人 | 飲み薬で治療と予防を両立できる | 腎臓や肝臓の状態によっては使えない |
| 抗CGRP抗体(注射) | エムガルティ、アジョビ、アイモビーグ | 保険診療で自己負担1〜3割 | 発作が頻繁で予防が必要な人 | 月1回または3カ月に1回の注射で効果が持続 | 通院が必要になる |
新しい経口CGRP受容体拮抗薬は、発作時の治療と予防の両方に使える国内初の飲み薬として注目されています。これまでCGRPを抑える治療は注射のみでしたが、飲み薬で選択肢が広がったことは大きいと言えるでしょう。トリプタンと違って血管を収縮させないため、心臓や血管への負担が少ないのも特徴です。どの薬が合うかは、頭痛の頻度や症状、持病によって変わります。自己判断で選ばず、頭痛外来や脳神経内科で相談するのが確実です。
受診の目安と頭痛外来の探し方
次のような頭痛は、我慢せずに医療機関を受診してください。突然今までにない激しい痛みが起きた場合、発熱や意識の混濁、手足のしびれを伴う場合、これまでと違う特徴の頭痛が続く場合です。こうした症状は、くも膜下出血や脳卒中など重い病気のサインである可能性があります。
片頭痛や緊張型頭痛でお悩みの場合は、頭痛外来の受診を検討しましょう。日本頭痛学会が認定する頭痛専門医がいる医療機関は全国にあります。かかりつけ医に相談すれば、適切な専門医を紹介してもらうこともできます。受診の目安として、月に2回以上頭痛があり日常生活に支障が出ている場合は、片頭痛の予防薬の相談をする良いタイミングです。
受診前に一週間分の頭痛ダイアリーを持参すると、医師との会話がスムーズになります。いつ、どんなときに、どのくらい痛むのか。どんな薬を飲んで、効き目はどうだったのか。これだけでも診断の精度は大きく変わります。
頭痛との付き合い方で一番もったいないのは、我慢することです。市販薬が合う人もいれば、新しい治療薬で生活が一変した人もいます。まずは頭痛ダイアリーを一週間つけてみてください。痛みのパターンが見えたら、それが受診の際の大きな武器になります。そして、つらい痛みが続くなら、専門医の門を叩くのを先延ばしにしないでください。