まず知っておきたい:頭痛には種類がある
頭痛とひと口に言っても、その正体は大きく異なります。日本頭痛学会の診療ガイドラインによれば、日本人の頭痛の大部分は緊張型頭痛と片頭痛の2つに分けられ、それぞれ対処法が正反対になることさえあります。
緊張型頭痛は、頭全体や後頭部がヘルメットやハチマキで締めつけられるように痛むのが特徴です。デスクワーク中心の方や、責任ある立場でストレスを抱えやすい方に多く見られます。痛みは軽度から中等度で、午後から夕方、長時間のパソコン作業の後に悪化しやすいという傾向があります。肩こりや首のこり、目の疲れを伴うことが多く、入浴や軽い運動で楽になることがあります。
一方の片頭痛は、ズキズキと脈打つような痛みが片側に現れることが多く、吐き気や光・音への過敏さを伴います。体を動かすと悪化するのが特徴で、発作は数時間から数日続くこともあります。日本では片頭痛の有病率は約8.4%とされ、推計で約840万人が片頭痛を有すると報告されています。
さらに、日本人に増えているのが「天気痛」と呼ばれる気圧の変化による頭痛です。低気圧が近づくと痛みが出る、という方は案外多いもの。気象病とも呼ばれ、天気予報アプリと連動した対策が注目されています。
市販薬の選び方:成分で選ぶのが基本
頭痛薬を選ぶとき、何を基準にしていますか。実は、市販の頭痛薬は成分の系統によって効果や注意点が大きく異なります。自分の頭痛タイプや体質に合わせて選ぶことが大切です。
市販頭痛薬の比較
| 成分系統 | 代表的な市販薬 | 特徴 | 向いている人 | 注意点 |
|---|
| NSAIDs系 | ロキソニンS、イブA錠 | 効き始めが早く、しっかり効く。炎症を抑える | 痛みが強い人、生理痛にも使いたい人 | 胃への負担がある。空腹時の服用は避ける |
| アセトアミノフェン系 | タイレノールA | 胃への負担が少なく、眠くなる成分を含まない | 胃が弱い人、妊娠中(医師の指示のもと) | 効き目はNSAIDsより穏やか |
| 複合鎮痛薬 | ノーシン、セデス・ハイ、ナロンエースT | カフェインや鎮静成分が配合され、効き目が良い | 単剤では効きにくい人 | 月10日以上の使用で薬物乱用頭痛(MOH)のリスクが高い |
| 漢方系 | 呉茱萸湯、五苓散 | 即効性は低いが、体質改善を目指す | 冷えやすい体質、むくみやすい人 | 専門家のアドバイスを受けて選ぶのが安心 |
注意したいのが「薬物乱用頭痛(MOH)」です。頭痛薬を頻繁に使っていると、かえって頭痛が慢性化してしまうことがあります。複合鎮痛薬は月10日以上、単剤でも月15日以上の使用はMOHのリスクが高まるという報告があります。「この薬じゃないと効かない」と感じるようになったら、要注意です。
頭痛が月に4回以上ある方は、複合鎮痛薬よりも単剤を選ぶ方が安全です。また、痛みを我慢しすぎるのも良くありません。市販薬を飲むタイミングは、痛みが軽いうちが効果的です。
専門外来の活用:我慢はもうやめよう
市販薬で改善しない、頭痛の頻度が多い、吐き気やしびれを伴う——そんな場合は専門医の受診を検討しましょう。日本頭痛学会が認定する「認定頭痛専門医」は全国にいます。頭痛外来を開設しているクリニックも増えており、初診からオンライン診療に対応しているところもあります。
片頭痛の治療は近年大きく進歩しています。従来の鎮痛薬やトリプタン製剤に加えて、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)に着目した治療薬が使われるようになりました。2025年には、経口CGRP受容体拮抗薬である「ナルティークOD錠75mg」が日本で承認・発売されています。この薬は片頭痛発作の急性期治療だけでなく、発症抑制にも適応を持つ点が特徴です。
「病院に行くほどではない」と思っている方も多いでしょう。しかし、頭痛外来で適切な診断を受けることで、これまでの対処法が大きく変わることは珍しくありません。
大阪の頭痛外来に通う40代の会社員・田中さんは、こう話します。「10年以上、市販薬でごまかしてきました。でも専門医に診てもらって、自分の頭痛が片頭痛だと分かってから、対処法が変わりました。暗い部屋で休む、カフェインを控える、そういう基本的なことが自分に合っていなかったと気づいたんです」
頭痛ダイアリーで自分のパターンを知る
頭痛の対処法を考えるうえで、記録は大きな助けになります。頭痛ダイアリーをつけることで、痛みの頻度や強さ、誘因(きっかけ)と症状の相関が分かるようになります。最近はスマートフォンのアプリでも手軽に記録できます。
ワンタップで記録できるアプリや、受診用のPDFレポートを出力できるものもあります。完全オフライン・アカウント不要・広告なしのものもあり、プライバシーを気にする方にも使いやすいでしょう。記録を持って受診すれば、医師とのコミュニケーションもスムーズになります。
記録のポイントは以下の通りです。
- 痛みが始まった時間と強さ
- その日の天気や気圧の変化
- 睡眠時間と食事内容
- 服用した薬の種類と量
- 生理周期(女性の場合)
日常生活でできるセルフケア
専門医の治療と並行して、日常生活でのセルフケアも重要です。緊張型頭痛には、入浴や軽い運動、ストレッチが効果的です。長時間のデスクワーク中は、1時間に一度は首や肩を動かすようにしましょう。
片頭痛の場合は、光や音を避けて静かな場所で休むことが大切です。カフェインの摂取は、頭痛の予防に役立つ場合がある一方、過剰摂取はかえって頭痛を引き起こすこともあります。自分のパターンを知って、適切に付き合いましょう。
気圧の変化による天気痛には、耳の周りのマッサージや、こめかみを温めるのが効果的とされています。天気予報アプリで気圧の変化をチェックし、下がりそうな日は無理をしないことも一つの対策です。
受診の目安と行動への一歩
頭痛が続く場合、次のようなサインがあれば早めに医療機関を受診してください。
- 今までにない激しい頭痛が突然起こった
- 頭痛とともに、しびれや言葉の障害、意識障害がある
- 頭痛が月に4回以上ある
- 市販薬の使用頻度が増えている
- 頭痛で仕事や家事に支障が出ている
頭痛外来や脳神経内科を受診する際は、事前に頭痛ダイアリーを持参すると診断がスムーズです。日本頭痛学会のウェブサイトでは、認定頭痛専門医の一覧を都道府県別に確認できます。お住まいの地域でオンライン診療に対応している医療機関もありますので、気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
頭痛は我慢するものではありません。適切な対処法を知り、必要に応じて専門家の力を借りることで、痛みのない毎日はきっと手に入ります。まずは自分の頭痛のタイプを知ることから始めてみましょう。