日本人の頭痛はなぜ多いのか
最新の診療ガイドラインや厚生労働省の調査をひもとくと、日本人の頭痛にははっきりした特徴が見えてきます。一つは肩こりや首こりを伴う緊張型頭痛の多さ。もう一つは、ズキズキと脈打つ片頭痛です。30代から40代の働き盛りに多く、職場での集中力低下や休職につながるケースも珍しくありません。
テレワークの定着で、姿勢が固定されたまま長時間画面を見つめる時間が増えたことも影響しています。頭を支える首や肩の筋肉が凝り固まると血流が悪化し、緊張型頭痛を引き起こしやすくなるのです。気圧の変化に敏感で、雨の前に頭痛が起こる「天気痛」を訴える人も増えています。梅雨の時期や台風シーズンに頭痛が悪化するのは、こうした気圧変動が関わっていると考えられています。
頭痛は大きく「一次性頭痛」と「二次性頭痛」に分けられます。一次性頭痛は検査をしても原因となる病気が見つからないタイプで、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の3つが代表的です。片頭痛はこめかみや目の奥がズキズキと脈打つように痛み、吐き気や光・音への過敏を伴います。体を動かすと痛みが強まるのが特徴で、数時間から数日続くこともあります。緊張型頭痛は頭全体をベルトで締め付けられるような痛みで、肩や首のこりが伴います。群発頭痛は目の奥をえぐられるような激しい痛みが一定期間に集中して起こり、男性に多いとされています。
一方、突然の激しい痛みや意識障害、手足のしびれを伴う頭痛は二次性頭痛の可能性があります。脳出血や脳腫瘍など命に関わる病気が潜むこともあるため、こうした症状があれば迷わず医療機関を受診してください。
頭痛ダイアリーと生活習慣でコントロールする
頭痛のタイプを見極める第一歩は記録です。頭痛ダイアリーには、発作の日時、痛みの強さや場所、天気、睡眠時間、食事内容を書き留めます。スマートフォンの専用アプリを使えば、カレンダー表示で過去の傾向を振り返りやすくなります。診察の際にこの記録を見せると、医師の診断精度も上がります。
記録を続けるうちに、自分の頭痛がどんな条件で起こりやすいかが見えてきます。睡眠不足が重なった日、生理前、気圧が下がる日など、パターンが分かれば対策も立てやすくなります。30代の会社員Aさんの場合、月に6回ほど片頭痛に悩まされていましたが、頭痛ダイアリーを3カ月続けて「前日の睡眠時間が6時間を切ると発作が出やすい」ことに気づきました。睡眠時間を確保する生活に変えたところ、発作の回数は半分以下に減ったといいます。
軽い頭痛なら市販の鎮痛薬で対応するのも一つの方法です。ただし、月に10日以上鎮痛薬を服用している人は注意が必要です。薬が切れると頭痛がぶり返す「薬物乱用頭痛」に陥るリスクがあるからです。頭痛の頻度が多い場合は、市販薬の回数を増やすのではなく、専門医の診察を受けるほうが賢明です。
医療の力で頭痛と向き合う
片頭痛の治療は、発作時の痛みを抑える急性期治療と、発作そのものを減らす予防療法に分かれます。急性期にはトリプタン製剤が広く使われてきましたが、血管を収縮させる作用があるため、脳血管障害や心血管疾患の既往がある人は使えない場合があります。
近年、こうした課題を解決する薬も登場しています。CGRP関連薬は片頭痛の原因物質に直接働きかける仕組みで、注射タイプに加えて内服タイプも選択できるようになりました。内服薬は1つの薬で急性期治療と予防療法の両方に対応できるのが特徴で、水なしで飲める口腔内崩壊錠もあるため、外出先での急な発作にも対応しやすいとされています。保険適用には一定の条件があるため、専門医の評価が必要です。
| 治療の選択肢 | 具体例 | 費用の目安 | こんな人におすすめ | メリット | 注意点 |
|---|
| 市販の鎮痛薬 | イブプロフェン配合薬など | 数百円~1,500円程度 | 月に数回の軽い頭痛 | ドラッグストアで手軽に購入できる | 使いすぎると薬物乱用頭痛のリスク |
| 頭痛外来での処方 | トリプタン製剤など | 保険診療のため手頃な自己負担 | 片頭痛の診断がついている人 | 発作時に高い効果が期待できる | 血管系疾患の既往がある人は医師に相談 |
| 予防療法 | CGRP関連薬(注射・内服) | 内服は1回900円前後、月の予防で1万円前後(3割負担の目安) | 月4日以上発作があり生活の質が下がっている人 | 発作そのものを減らせる | 保険適用には条件があり専門医の判断が必要 |
| 頭痛専門クリニック | 日本頭痛学会専門医による外来 | 診察・検査は保険診療の範囲 | 原因が分からず長く悩んでいる人 | 専門的な診断と治療計画が得られる | 予約制の施設が多く、受診までの調整が必要 |
頭痛外来を標榜するクリニックは、日本頭痛学会の専門医が診療にあたるケースが多く、これまで「市販薬が効かない」「原因が分からない」と諦めていた人にも、適切な治療法を提示してくれます。福岡や山梨など地方都市でも頭痛専門クリニックが増えており、受験期の子どもの頭痛に特化した外来もあります。長時間の学習で頭痛を訴える子どもがいたら、我慢させるのではなく早めに相談するのがおすすめです。
頭痛外来を上手に使うコツ
受診のタイミングに迷う人も多いでしょう。片頭痛の診断には頭痛ダイアリーの記録が役立つため、受診の2週間ほど前から記録をためておくと、医師との会話がスムーズになります。かかりつけの内科で相談するのも良いですが、より専門的な診断を受けたい場合は、日本頭痛学会のホームページで専門医や認定教育施設を探せます。
お近くの頭痛外来を検索するときは、「頭痛外来 専門医 地域名」というキーワードで探すと、通いやすいクリニックが見つかりやすいでしょう。最近では脳神経内科や脳神経外科を標榜するクリニックが頭痛外来を併設しているケースも増えており、駅近のクリニックモール内に外来を構える施設もあります。
頭痛は我慢するものではなく、適切に対処できるものです。頭痛ダイアリーを始めて、生活のパターンを見直し、必要なら専門医の扉をたたく。その積み重ねが、頭痛に振り回されない日常への近道になります。次の頭痛が来る前に、できることから始めてみませんか。