いま日本で電気エンジニアが求められる理由
日本では少子高齢化に伴う技術者不足が深刻です。経済産業省の資料によれば、電気主任技術者の免状取得者は直近10年で1割以上減少しており、対策を講じなければ2030年時点で第二種だけでも約1,000人の人員不足が生じる可能性があると指摘されています。
一方で、太陽光発電や蓄電池の導入は年々拡大しています。大阪府と大阪市が共同設置する「おおさかスマートエネルギーセンター」では、太陽光パネルと蓄電池の共同購入支援事業を実施し、家庭向けに工事費込みのトータルサポートを展開。こうした再エネ関連設備の増加が、電気工事士や電気主任技術者の需要をさらに押し上げています。
もう一つの追い風がEVです。政府は2030年までに30万基の充電施設整備を目標に掲げ、すでに4万基超が稼働。急速充電器の大出力化も進み、家庭用のV2Hシステムや充電設備の設置工事を担う電気エンジニアの仕事は増える一方です。さらに半導体や車載インバータ、パワー半導体の検査装置など、ものづくり分野でも電気回路設計のニーズが高まっています。
つまり、電気エンジニアは「守りの需要」(電力保安・設備維持)と「攻めの需要」(再エネ・EV・半導体)の両方に支えられた、将来性の高い職種なのです。
電気エンジニアが手にすべき代表的な資格
電気エンジニアと一口に言っても、守備範囲は広いものです。設計・開発型と現場保安型では求められる資格が異なります。ここでは代表的な国家資格を整理してみましょう。
| 資格名 | 主な仕事 | 取得難易度 | 向いている人 | メリット | 注意点 |
|---|
| 第二種電気工事士 | 一般住宅・小規模施設の配線工事 | 学科合格率58.6%、技能71.8%程度 | 未経験・転職希望者 | 需要が安定し、最初に取りやすい | 扱える設備の規模に上限がある |
| 第一種電気工事士 | ビル・工場などの大規模設備工事 | 第二種より難度が高い | 施工管理を目指す人 | 高圧設備まで対応可能 | 実務経験が必要なケースが多い |
| 第三種電気主任技術者 | 小規模な発電・変電・工場の保安監督 | 4科目、合格科目は翌年免除 | 保安管理や点検業務に興味がある人 | 就職口が多く、評価が高い | 4科目の勉強時間がまとめて必要 |
| 電気工事施工管理技士 | 工事の計画・安全管理 | 区分による | 現場全体を統括したい人 | 施工管理職で年収アップが見込める | 実務経験と受験要件の確認が必須 |
第二種電気工事士は学科試験がCBT方式にも対応し、筆記より受験しやすい面があります。学科の合格率は平均58.6%、技能試験は71.8%と、事前公表問題から出題されるため、計画的に準備すれば十分クリアできる難易度です。
電気主任技術者は発電所・変電所・工場・ビルの保安監督を担う国家資格で、社会的評価が高いのが特徴。まずは第三種からチャレンジするのが一般的で、合格科目は翌年以降に免除されるため、働きながらでも科目を分けて受験できます。
資格取得からキャリア構築までの実践ガイド
資格さえ取れば仕事に困らない、というわけではありません。現場で評価されるのは、資格に加えて「実務で何ができるか」です。ここではキャリアを積む上で押さえたいポイントを紹介します。
1. まずは第二種電気工事士からスタート
未経験なら、まず第二種電気工事士の取得が現実的な入口です。年間13万人前後が受験するメジャーな資格で、学科と技能の2段階。合格率のデータからも、独学と通信講座を組み合わせれば十分狙えます。取得後は電気工事会社や設備会社、住宅メーカーなど、就職先の選択肢が広がります。
2. 実務経験を積みながら上位資格へ
第二種を取得したら、ビル管理や工場設備の現場で実務経験を積みましょう。一定の経験を積めば、第一種電気工事士や電気主任技術者へのステップアップが見えてきます。電気主任技術者は、経済産業省が定める認定校を卒業後、実務経験を積むことで試験なしに取得できるルートもあります。
3. 成長分野に合わせてスキルを磨く
再エネ・EV・半導体の分野で評価されるのは、電力変換技術や回路設計の知識です。HEVやBEVの車載インバータ、SiCパワー半導体の検査装置など、電気回路設計の経験を持つ技術者の求人は増えています。愛知県など製造業の集積地では、回路設計経験者を歓迎する求人が多く見られます。
4. 地域資源を活用する
自治体によっては再エネ設備の共同購入事業や補助金を実施しています。大阪の「おおさかスマートエネルギーセンター」のように、太陽光パネルと蓄電池の導入をトータルサポートする仕組みもあり、こうした事業に施工・点検の技術者として関わるのもキャリアの選択肢です。住まいの地域のエネルギー施策を調べてみると、仕事のヒントが得られるでしょう。
将来の選択肢を広げるために
電気エンジニアの仕事は、目に見えにくいけれど社会の土台を支えるやりがいがあります。再エネの拡大、EVの普及、半導体の国内生産強化と、追い風の分野は複数あります。資格取得は一つの通過点であり、そこからどう実務を積み、どの分野に軸足を置くかがキャリアを左右します。
もし「電気の仕事に興味はあるけれど、何から始めればいいか分からない」という状態なら、まず第二種電気工事士の受験を視野に入れてみてください。電気技術者試験センターのサイトでは試験日程や受験案内が公開されており、上期・下期と年2回受験のチャンスがあります。電気エンジニアとしての一歩を、ぜひ自分のペースで踏み出してみてください。